拾う男

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残念ながら正式メンバーとして招集されることはなかったけれど、地元やサッカー関係者にはそこそこ知られた存在だった。 そんな彼は高校在学中からずっと、卒業後の進路について他のチームから誘いを受け続けてきた。 中にはJ1のチームもあった。 でも樹はきっぱりと全部断り、地元のジュヴァリアルをメジャーにするために日々努力を重ねてきた。 ただただジュヴァリアルを、地元を、愛していたからだ。 そんな樹も、ごくたまに、女の子に誘われてデートをすることもあった。 それでも夕方の練習にはちゃんと間に合う。 デートなんてつまらない。サッカーより夢中になれる子なんて居ない、と彼は言うけれど、 本当のところは女の子が早々に帰ってしまうからだ。 そしてそれっきり連絡が取れなくなった。 何故連絡が取れなくなるのか、樹には永遠の謎である。 サッカーは裏切らない。サッカーが俺の全て。これが俺の人生。 そう思って生きてきた。
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