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ちらちらとシッカロールみたいな雪が舞っていた。
日の落ちた藍の空は、じっと見ているだけで吸い込まれそうになる。真綿を薄く伸ばしたみたいな斑雲が空を覆い、薄い膜の内側から一番星が透けて見えた。
窓に映るクリスマスツリー。漏れた光がチカチカと、新しく積もったばかりの雪に、赤や緑、黄に鮮やかな色を落としている。
輝きを放つ薄硝子のオーナメント。したひしゃけた顔の赤モールのサンタクロースのひげ面を見て、私は怖いと思った。
「今夜は冷えるわ」
お母さんはペチカストーブの上でシナモンクッキーを焼いていた。
「細かな雪が降る夜は、気温がぐんと下がるのよ」
ベランダの手刷りに取り付けた温度計は、氷点下六度を指している。
確かに暖かいのはペチカの周辺だけで、部屋全体の温度はなかなか上がらなかった。
私は絨毯張りの床にぺったりと座り、座卓の上で黒い画用紙をツリーの形に、輪郭だけをくり抜いていた。
円い形のオーナメント、ギフトボックス、長靴、ふわふわのモール。切り絵の要領でカッターを入れる。
描いた線に沿って紙を切り取り、その上からセロハンを貼る。ピンクや紫、赤に緑。電飾と同じで色とりどりに糊を使って貼り付けた。
「できた」
紙を両手で掴み、窓に向かって翳した。お手製ステンドグラスの完成だ。
「あらまぁ、綺麗だこと。上手に出来たじゃないの」
お母さんはに褒められ、つい嬉しくなった私は、早速もう一枚の黒い色画用紙をスケッチブックから取り出して、カッター板の上に置いた。
今度はお家にしよう。
三角屋根の家の形に切り取る。煙突。煙がもくもくと出ている。十字架のような窓のさんを切り抜く。そして、色とりどりのセロファンを貼った。
完成させた二枚を、母さんはセロハンテープを使って、窓ガラスに貼り付けた。
外が暗いせいか、思っていたより綺麗に見えない。
期待外れに私は少しがっかりした。
それでもお母さんは綺麗だ綺麗だと言って褒めるのだった。
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