怪しいやつら

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やれやれ……。美智は苦笑した。皐月の気持ちは半分冗談で、半分本心だと思っている。彼女はそうやって他人との距離感を計り、壁をつくって居心地の良い環境を作り出しているのだ。そうした甘えたやり方も問題だが、女の多い経理課でそれ相応の態度に改めない初瀬にも問題があると思った。 「さっちゃん。このくらいのことで怯んでいたら、会社勤めなんて続かないわよ。……初瀬さんもお嬢様という言い方は止めた方がいいですよ。事実だとしても、揶揄(やゆ)しているように聞こえます」 美智が注意すると初瀬が顔をしかめ、慌てて二宮が割って入る。 「まあまあ……、取りあえずビールでいいかな?」 同意するように三井と土橋、初瀬、桃香が手を挙げた。 「私、ノンアルコールで」と京子が言うので、美智もノンアルコールビールを注文した。 「カシスオレンジ!」 手を挙げた皐月は既に笑顔。美智は溜息をついた。
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