怪しいやつら

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木村が声をかけてくる。 「みっちゃん、奇遇だね」 「本当に……。木村さんが女性連れなんて珍しいですね」 美智は木村をからかった。彼は独身の四十男だ。昨年、彼の母親が美智を気に入り、その意を受けた彼がアプローチしてきたことがあった。根は真面目でも、おっちょこちょいで軽薄な言動に走ることが多い彼を、恋人や夫として見る気持にはなれず、美智は断った。 「なんだよ、みっちゃん。俺が女連れじゃ悪いか?……こいつらがあまりにも勝手なので、説教していたところだ」 「勝手って、何をしたの?」 「チビは昼休みも屋根の上にいるし、ジャンボはクレーン車を無断でドライブしたんだ」 チビと言うのは身体が小さいチヅルの愛称で、ジャンボは身体の大きな弥生のことだ。木村の話に三井や土橋が「それはダメだな」と批判めいた反応を示し、京子や桃香、皐月は声を上げて笑った。 「ドライブって……」 美智は、酔った顔でへらへらと笑っている弥生に眼をやる。彼女は確かに猫沢邸の花見の夜にクレーン車で乗り付けた。柔道4段の彼女は、美智が拉致されたと勘違いしたチヅルに一緒に助けようと呼び出されたのだ。 「それなら、私にも責任が……」 「違うのよ。私は、道に迷っただけなの」 美智の声を弥生が遮り、丸い顔をほころばせた。 「見ろよ、この態度。反省の色もない」 木村が苦笑する。 「ごめんなさいね」 美智は、弥生の耳元でささやいた。
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