お局美智Ⅷ ――美智 東京へ行く――

怪しいやつら

「ビールだヨ」「ノンアルコールとカシスです」

外国人と中年女の店員が飲み物をテーブルに置いた。

「ヨッシ、隣に追いつくぞ」

土橋がジョッキを掲げると、「負けないわよ」と弥生もジョッキを傾ける。すると、半分ほど残っていたビールが一息で空いた。

「まるで象だな」

木村がぽろっと口にすると、「それセクハラですよぉ」と皐月が指した。

「目上の者に失礼だろう。指を差すんじゃない」

土橋が注意すると、「パワハラだぁ」とチヅルが笑った。

「そうそう、土橋さんって、その傾向があるわね……」

京子が同意すると、「うわー、パワハラ男がいますぅ」とチヅルが繰り返し、宴会に火が点いた。

しばらくの間、たわいもない世間話で盛り上がっていたが、アルコールが脳細胞に浸透すると本音がこぼれ出す。

「決算期間中に経理課長が家族旅行だなんて勝手だな。居ても役に立たないからって、課長なのだから見守る責任があるはずだよな」

「創業者一族だから仕方がないですよ」

初瀬が毒づくと皐月が言いかえし、小さな口論に発展した。