新生活

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 高校に入学して3か月。学校生活にはだいぶ慣れてきた。  僕は部活には入っていない。放課後は一旦家に戻り、カバンを置いてすぐにある場所へと向かう。  町立の武道場。僕はここで週に5~6日、合気道を習っている。  父が学生時代にしていたこともあり、僕も小学生に上がると同時に、この道場へ通うようになった。父と手を合わせて、1つ1つの技を教えてもらった。受け身に始まり、基本的な立ち方、動き方。  身体が大きくなるにつれ、父と真剣に合気道ができるようになった。  僕の習っている合気道には試合はない。試合は「死会い」に通ずるとの理念から、試合ではなく型を鍛錬していく。考えずとも自然に身体が動くようになるまで、何十回も何百回も同じことを繰り返す。馴れ合いにならないよう、打ち込む方は真剣に打つ。その上で相手の1つになること。そして自分の使命を理解し、完遂すること。それがこの道場のモットーだ。  父が亡くなって、しばらくは来る気になれなかった。道場に来るのが、この景色を見るのが正直辛かった。しかしただぼーっと部屋に閉じこもっている訳にもいかなかった。  そして今日、僕は3か月ぶりに道場の門をくぐった。
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