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父の遺言
父が死んだ。
死因は肝臓癌。最後は全身に転移し、朦朧とする意識の中で、父は僕を呼んだ。
「いいか。
これからの人生、自分の徳を言いふらしてはいけない。
自分が行ったよいこと、人に施した善行…、そう言ったものを人に言ってはいけないよ。
約束してくれるかい?」
僕は黙って頷いた。頷くしかできなかった。
まもなくして、父はその生涯に幕を下ろした。
享年48歳。あまりにも早すぎる死だった。
高校の教師をしていた父。
いつも先人たちの格言や箴言を教えてくれた父。
もう、父はいない。
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