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「覚醒した物語と近づけば、僕らはなんとなくその相手がわかります。ただし、未覚醒の相手ならばそうもいかないし……相手が物語だとわかっても、その詳しいパーソナルデータまで調べるのは困難です。僕の力ならば、相手の個人情報を人間の探偵と同じ程度には調べることができるんですよ」
「道理で、私の家とか名前も知ってたのか」
「そうです。正確には、加賀美瑠衣さんを調べていたら貴女が近くにいることに気づいて、一緒にデータを調べておいたというのが正しいですが。僕の力なら“調査対象”にさえすれば、相手が未覚醒の物語でも判別できるものですから」
「へえ……そりゃ便利だわ」
しかも、涼貴の今までの物言いからすると――相手が何の物語であるのかも、調査すれば分かる様子である。まさに調査力チートというやつだ。
まあ、本当に凛音が“かぐや姫”であるのかどうかは――正直なところ、凛音自身が一番半信半疑であるのだけれど。なんといっても、ここまで色々見たというのに、その前世の記憶とやらが蘇ってくる気配が微塵もないのだから。
「僕の能力は魔法や補助に偏っているので、物理アタッカー型の仲間が欲しいと思っていたのですよね。加賀美瑠衣さんはまさにその能力を持っているので、是非とも仲間にと思っていたのですが……残念ながらピーターパンに先手を打たれてしまったようで。代わりに、貴女に白羽の矢が立ったというわけです。むしろ、仲間は何人いても足らないほどなのですから」
どうにか、話は理解できた。うんうん、と頷いて凛音は返す。
「わかったけど、それで?私はその前世とか能力とか、まだ全然なーんもないし……本当にそんなものがあるのか疑問で仕方ないんだけども」
「そうでしょうね。なので強制的に覚醒していただこうかと」
「強制的に?」
「ええ、強制的に」
何だろう、この大事なことなので二回言いました、感は。
なんだか嫌な予感がしてきた。凛音はおそるおそる、具体的には?と問う。そうだ、よくよく考えれば彼が沈黙の鳥籠を発動した理由は、単に能力を見せるためだけではないとしたら。
「戦って頂きます、僕と」
そしてあっさりと、涼貴はその端正な顔でにっこり言い放って見せるのである。
「命の危機に陥れば、大抵こういうものは目覚めるって相場が決まってるんですよねえ」
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