初メン

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「そーいえばさ、神田くんはこの仕事は2個目になるの?」 「はい、そーです!」 斎藤さんに質問された!緊張するよーーー! 「ふーん、でも2個目にはなるけど佐藤に鍛えられたならもう大丈夫かな?」 普段の斎藤さんはイタズラっぽい感じで喋るんだなぁ。 「俺は別に鍛えていない」 「えーなにそれ?新人にはちゃんと指導しなきゃだよ?こーやって…手取り足取りね?」 「うわっ!」 急に斎藤さんが隣に来て腰に手を回された。 「おい、嫌がってる」 「えー、このくらいただのスキンシップだよ?佐藤はあんまりベタベタしないもんね?」 「佐藤先輩は光一さんと違ってシャイなんだよー?」 「俺はシャイじゃない。お前らと違って落ち着いてるだけだ」 せ、先輩達がわちゃわちゃしてる…。録音したい!できないけども… 「ちょっとちょっとー!僕はかんちゃんとおしゃべりがしたいのー!かんちゃんもっと喋っていいんだよ?」 「あぁ、すみません!つい聞き惚れてました…」 「なになに!そんなに僕の声がいいの?かーんちゃん?」 「ひっ」 「色気のない声だなー先輩が鍛えてあげようか?」 あっしーに耳元で囁かれてドキっとした…。心臓に悪いよっ! この空間に僕は耐えられるのかな。 「やめとけ、からかいすぎだ。嫌になってこの業界をやめたらどうする」 佐藤さん、庇ってくれてる。なんか嬉しいな。 「この程度でやめる声優をあの監督が呼ばないでしょ」 今回の作品の監督のことだよね? 「どーいうことですか?」 「かんちゃんはまだ分からないことばっかだもんねー」 「売れっ子声優光一が教えてやろう!」 「うわっ、光一さんもう酔ってるの?」 「俺達の今回のアニメ監督!中川さんはヒット作を連発しているすごい人だ!あの人は細かい所まで目を光らせ、完璧なものをつくる!だから声優選びからガチ!それに君は僕達は!選ばれたってことの意味をわかるかぃ?」 「ながっ!」 「芦田よ!うるさいっ!」 な、なるほど…。僕がそんなすごい人に選んでもらえた。努力が実りつつあるのか!嬉しいなぁ。 「僕、頑張ります!」 「うんうん、僕と一緒なら大丈夫!これから2人で読み合わせもしよーね?」 「はいっ!」 「いろいろ教えてあげる」 「ひっ」 ま、また耳元でっ!!! 「まずは、色気からだなー!」 そういってふふっと笑うあっしーに少し怯えながらも、たくさんのことを教えて貰えることに嬉しさを感じる! 僕、ちゃんと声優になれてるんだ。 「俺も、教えてやれることがあれば協力する。前回、言えなかったこともちゃんと言うから頼って欲しい。」 「はい!佐藤さんありがとうございます!」 「俺も教えるー!頼れ頼れ〜〜」 「お願いします!斎藤さん!」 あぁ、なんて幸せなんだろう。 僕はこの時これから始まるアフレコを舐めていたのかもしれない。 そしてまだ芦田奏汰の怖さを知らないんだ。
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