赤色矮星

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常にサングラスを掛けている様だと呟く、古い視覚を持つ者達。 彼等は、視野の補助に暗視スコープの如き眼鏡が手放せない。 此処では多勢になった新しい視野を持つ人は、薄暗い中でも不自由しない為に日常で使われる光源の明度に付いては時に、家族間でも先祖返りした地球型視野を持つ者が生じてしまうのが問題になっている。 だが、視覚が暗所に適応するのは仕方がない。如何に人が地球外惑星を開発しても、その生活圏を根底から支える恒星の開発までは不可能だからだ。これに関しては生物として、人もまた進化し適応し続けているのだとしか言い様がない。 ただし視覚の変化と共に、陽射しの弱さが人の肌に起こした変化は大方の予測を裏切った。 日射量の少なさは皮膚上のメラニン色素を減らし、肌色は白人種(コーカソイド)の様に白く変化するかと思われたのだが、意外な事に暗がりの中では暗色の方が目立たないからだろうか、人の肌色は暗い色合いへと変化した。 恐らくは動物としての本能的な危機管理能力が、捕食者へ発見される危険性を回避する為に起こったのだとされる変化だが、黒人種(ネグロイド)とも違う暗色の肌は新しい人類の象徴として扱われるから富裕層の人にも良く知られているだろう。 最も、地球型の生活を頑なに守ろうとする富裕層には少なく、新たなフロンティアへと挑戦し行く開拓者達……いわば貧困層に多く見られる変化の為に陰では労働者の色と揶揄されるが。
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