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黄昏の時間帯のみが、人が平穏に過ごせる世界。
銀河に散らばる人が繁栄出来る場所の多くは、その主星にG型恒星よりももう少し暗く寿命の遥かに長い赤色矮星を母星とするものが多いからだ。太陽の46%以下の質量しか持たない星の寿命は、宇宙と共に生きて来たと言って良い程に長い。
生命居住可能地帯は輝きの弱い主星の為に、太陽と地球の関係よりも近い位置に在り、天を占める恒星の割合は広く大きくなり、移住当初は凄まじい圧迫感を恐怖感と共にもたらす。杞憂の言葉を思い出す程の主星に、何時か天が落ちて来るのではないかと根源的な部分からの不安を覚えるのだ。
実際に落ちるのならば、質量差故に、惑星である方が恒星である主星のガスの中に落ちるに違いないのだが。もしくは運悪く、ガンマ線バーストの際に巨大プロミネンスの放出が有ればそれに飲み込まれるかだ。
惑星は太陽を廻る地球よりも公転周期が短い場合がほとんどで、代わりに自転周期は恐ろしく長いか、近い位置に在る主星の重力や潮汐力、大気の摩擦に引き摺られてその回転を止めているが為に人類は黄昏の時間帯にのみ生活圏を得ている。
つまりは地球に対し月が常に同じ面を向けているのと同じ状態だ。こうなればいわゆる白夜が続き、陽射しに晒される昼の面は灼熱に焼かれ、極夜が続く夜の面は凍てついた極寒となり前述の地獄が誕生する。
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