赤色矮星

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太陽系第二惑星である金星が、自転速度の遅さ故に最低228(ケルビン)最高773Kの想像を絶する惑星表面温度差を持つ事を思えば当然だろう。 最も開拓された星はスーパー・アースと呼ばれる程に巨大な惑星が多く、薄暮の時間帯にのみ生活圏が限られても人は発生場所とした地球よりも広々とした土地を得て来た。 頑なに一日二十四時間のリズムは守り続けられ、人の生活単位は遠い過去より変わらない。 四季どころか、一日の変化も乏しい惑星上で一年を三百六十五日とし(もちろん、閏年も忘れてはいない)、昼の十二時間と夜の十二時間を制定して。 常に夕暮れとも、朝焼けとも言える時間が続く薄明の世界。 暗緑色と紫、黒い樹皮の森は、今では赤い空もあって過ごし易くとも地獄の様相を強くする。 「投降したまえ」 拡声器に因る割れた怒鳴り声が響く。裕福層の筆頭、その長子となるグルガ・イースの声だとは分かるが私には距離が掴めない。持つべき者の務め(ノブレス・オブリージュ)だと戦局の矢面に立つ肝っ玉は称賛に値するだろうが、貧困層を人と見なさない考えは唾棄するべき男。 人の生活圏は広いとは言えど富は一部に偏り、周りは惑星本来の環境に飲み込まれる中でのゲリラ戦は、正に互いの物資と精神、人を費やして行く消耗戦だ。物資の潤沢な富裕層側に比べ、この惑星に根付き開拓の主力となって来た貧困層側は、地の利を得て互角に戦っているに過ぎない。
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