赤色矮星

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ハイテク機器は主星から定期的に放たれるプロミネンスの働きに因る、強大な地磁気の影響のせいで役立たずと化し、戦局は泥沼のゲリラ戦と成り果てて久しい。 地磁気の嵐が繊細な機械を破壊さえしなければ、支配層でもある裕福なコロニー移住者側こそが圧倒的な勝利を掴める状況が最初にあったのにだ。 この星では機械類は特別に保護しなければ使い物にならない。 電子機器に頼れば、だだ一度のガンマ線バーストで生活の基盤は揺るがされる。 故に此処では十九世紀か、二十世紀初頭の蒸気機関が発達した時代の生活が普通だ。 インテリと呼ばれる人材は支配層に偏り、貧困に甘んじなければならない労働者層は屈強な肉体を得ていたのもあるだろう。 かつては重機さえ人工知能搭載の無人型が主流で、人が直接に大地に触れる事は少なかったと言うが、赤色矮星から定期的に放たれる暴力的な光の奔流は、人類に知の財を捨て去る事を強要したのだ。 「なにが投降したまえだ」 隣でベッとネバ付いた唾を吐き出し、最早照準など当てにならない銃を抱えた戦友が呟く。 こちらには暗視スコープなど無い。 彼の瞳は地球型のものだけに、それを嫌い、殊更に突っ掛かり易く出来上がっている性質は吐き始めた悪態を途切れさせない。
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