赤色矮星

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「貴様等の欲の皮が、突っ張り過ぎてんだろうが」 恐らくは拡声器を使う男と同じ古い型を持つ自身を嫌悪し、憎悪の域にまで感情を高ぶらせている彼。だがその肌は労働者の色であり、特に青みが強く美しい。 闇雲な突進をさせぬ様、後方へと回り込み囁く。 「位置は分かるか」 視覚に頼り辛い彼は聴覚が研ぎ澄まされている。おまけに生まれ持った絶対音感が、この泥沼化したゲリラ戦では大いに役立つからこそ、常に悪態を吐いていて煩わしくとも失いたくない人材なのだ。 「此処から二時の方向。拡声器の声の割れ具合からM=78型として、距離は三キロと離れちゃいない」 「よし、回り込むぞ」 手早く樹皮に二本の線を刻み、特殊な塗料を吹き付ける。適応した視覚ならば分かり易く、地球型視野の者には何の変化も見られない色だが、周りに味方が潜むならば後を追ってくれるだろう。最も、この戦局では誰もが巧みに姿を隠し、何処に居るのかは分かり辛いのだが。 視覚に頼り難いからこその工夫。そして支配層となる輩どもには、その(いにしえ)から頑なに守って来た慣習故に判断の誤り易い印。変化に追い付けない富裕層、否、変化を退化と捉えている節すらある奴等には負けたくない。
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