唇まで、あとちょっと。

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「……この、“君”ってのは、俺って認識で合ってる? それとも……ただの自意識過剰な勘違いヤローかな」 青井が、私を真っ直ぐに見下ろしてくる。 この目に見つめられたら……嘘なんてつけない。 私は視線を泳がせながら、曖昧に頷いた。 「じゃあ、もしかしてさっきの(・・・・)、あながち夢じゃなかったり……」 「え……」 青井が、自分の口元をちょんと指で触る。 「すげーいい夢見てたの。日生とキスする夢」 「っ!」 カッと顔が熱くなる。 絶句して固まる私の手に、青井は約束通り「はい」とスマホを握らせてきた。 「…………青井、引いた?」 「何で?」 「こんなこと、書いてて……」 あまりの恥ずかしさに手で顔を覆う。 これほど妄想炸裂の文章を、まさか本人に見られるなんて……最悪すぎる。 「じゃあさ、逆に聞くけど」 「え?」 「俺が脳内で日生にあれやこれやしてるって聞いたら、引く?」 「……へっ!?」 とんでもないことを言われて勢いよく顔を上げると、ばつが悪そうな表情でぽりぽりと頬を掻く青井。 その顔は、私と同様耳まで真っ赤だ。 「一度キスしたら止まらなくなりそうで自分が信用できないから、怖じ気づいて日生に手ぇ出せないって聞いたら……? 本当は日生のことずっと名前で呼びたかったけど、絶対周りの奴らから“青井(あおい) (あおい)”だってからかわれるから、日生に嫌な思いさせたくなくてなかなか呼べない小心者だって聞いたら…………お前、引くか?」
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