唇まで、あとちょっと。

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マフラーの奥から、規則正しい寝息が聞こえる。 元々童顔の青井は、眠っているとなおさら幼くて、意外と睫毛長いんだ、って新しい発見もしたりして。 青井が呼吸する度にマフラーの口元が僅かに動いて、私はじっとそこに見入ってしまった。 心臓が騒がしい。今にも口から出てきてしまいそう。 教室には私達以外誰もいない、とか、 青井は爆睡してて気づく気配もない、とか、 そんな言い訳を頭に並べながら、私は青井のマフラーにゆっくりと手を伸ばす。 ―――唇まで、あとちょっと。 だけどその、あとちょっとが、遠くて。 私は伸ばしかけた手を引っ込めると、そのまま机の上に乗せた。 それから、吸い寄せられるように顔を近づける。 青井のマフラー越しの口元に、私の唇がかすかに触れた。 あ……温かい…… 温もりを意識した瞬間ドクンと胸が高鳴って、私は慌てて青井から身体を引き剥がした。
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