唇まで、あとちょっと。

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「てか、俺“教室で待ってる”ってメッセージ送ったんだけど見てない?」 「えっ! そうなの? ごめん気づいてなかった」 私はメッセージを確認しようと、ポケットのスマホを取り出した。 だけど電源ボタンを押した拍子に手が滑って、スマホは無惨にもカシャンと音を立てて床に落下してしまった。 「あーっ何やってんの! 壊れてねぇかな……」 青井が足元に滑り込んだ私のスマホを拾い上げる。 そして学ランの裾でホコリを払いながら…… ピタ、とそのまま固まってしまった。 「青井?」 「…………これ、新しく書いてる小説?」 そう言われて、ハッとスマホに視線を向ける。 液晶に表示されたままだったあの文章が目に飛び込んできて、私の身体は沸き立つほど一気に熱くなった。 「やっ! ちょっと、返して!」 「おっと」 「だめぇぇ」 青井に飛びかかる勢いで手を伸ばすも、パッとスマホを上に持ち上げられてしまって、150㎝の私には到底届かない。 「バカ青井! 返してってば」 「じゃあ……俺の質問に答えてくれる? そしたらちゃんと返すから」 何で……と思いつつ、スマホを人質に取られてる私は、首を縦に振るほかない。
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