唇まで、あとちょっと。

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うそ………… 青井が、そんなこと思ってたなんて。 「引かない……よ」 「じゃあ、俺だって引くわけない」 「……ホント?」 「ホント!」 青井はおもむろに自分の首に巻いていたマフラーを外すと、私を引き寄せてふわりと首にかけた。 青井のヘアワックスの香りが鼻を掠めて、堪らず首を竦める。 すると、あろうことか青井はそのマフラーを自分の首にも巻きだした。 「わっ、ちょっ……」 一つのマフラーを、二人で向き合って巻いてる状態。 うぅ……近い……! 息のかかる距離に、青井の顔がある。 熱を帯びた瞳にじっと見つめられて、目が離せない。 「日生も同じ気持ちなら…… もう、我慢しなくてもいいですか」 「は……はい」 「プッ! (かしこ)まってる」 「なっ、青井もじゃな……ンッ」 私の言葉を遮るようにして、 ―――青井と私の距離が、(ゼロ)になった。
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