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なんか……やっと実感が湧いてきた気がする。
私が独り言のように呟くと、青井も「だな」と照れ臭そうに笑う。
私は、そんな青井の耳朶を引っ張って、少し強引に自分の口元に引き寄せた。
「イデデデ」
「好きだよ、孝太郎」
「……はぇっ!?」
初めて、青井のことを名前で呼んだ。
身体中から愛しさが込み上げてきて、じわじわと私の心を満たしていく。
裏返ったマヌケな声も、
本物のコザルみたいに真っ赤な顔も。
私の中の“好き”が、また一つ二つと増えていく。
「これなら、被らないでしょ……呼び名」
「~~~ッッ、葵!!」
「う……苦しいってばぁ」
「葵、俺っ! “青井 葵”が嫌なら婿でもいいからな! 次男だし!」
「ちょっ、いきなり何の話してんの……!!」
これでもかとぎゅうぎゅうに抱きしめられて。
思わず笑っちゃうほどに幸せで。
私は、青井と青井のマフラーに包まれながら、そのくすぐったくて暖かな温もりをめいっぱい噛みしめた。
***
「ねぇ葵、さっきの小説……続き書いてよ」
「えぇ……だってきっと、ただ甘いだけのお話になっちゃうよ」
「いいじゃんそれでも! 直球ストレートが一番心に響くんだって」
「そうかなぁ……」
「まぁ、とか言って俺が読みたいだけなんだけども!
なんなら協力しますよ?」
「んん~…………じゃあ、とりあえず――――」
―――やっぱりもう一回……キス、したいな。
Fin✡.*
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