spicesugar 第九章

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色んな意味での恩人である雇い主からの返信を胸にドラッグストアを目指した。 しかしあいにくドラッグストアは帰り道とは反対側の駅向こうにあった。スーパーから出て一度駅に戻らなければいけない。 (これは少し帰りが遅くなるな) いつもならとっくに家に着いている時間。帰って来た俺に『おかえり、蓮』なんて花咲里のとびきり可愛らしい笑顔で出迎えられている頃だというのに…… しかも今日は今までの状況とは違う。もしかしたら…… 『おかえりなさい、蓮。先にご飯にする? お風呂にする? それとも……ワ・タ・シ?』 「グハッ!」 思わずとんでもない妄想をして自爆した。胸を押さえながら盛大に吹き出した俺を道行く人たちが怪訝そうな顔で見ているのが分かり大層恥ずかしかった。 (ば、馬鹿か、俺は!) 少し考えれば花咲里がそんな如何にもテンプレなことを言うわけがないと分かるものなのに。 (ダメだ……妄想だけで勃って来た……) 男というのは情けなくも愚かな生き物だ──なんて哲学的なことを考えたりして気持ちを散らせ、足早にドラッグストアへと向かった。 勿論その道中、花咲里に【ほんの少しだけ遅くなります。心配しないでください野暮用です】とメールしていた。
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