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──夢のようなひとときだった
現実に起こった事だというのに何故かどこかふわふわとした夢見心地な気持ちの中に漂っているような微睡にいた。
そんな夢現の中で散々貪り尽くした花咲里の体を綺麗にしていてハッとした。ティッシュで拭う度にその白が赤く染まっている。
(ち……血っ…!)
それは花咲里が正真正銘処女だった証。仄暗い室内でも分かる鮮血は白いシーツにも点々と刻印されていた。
(俺が花咲里の純潔を……)
奪ってしまったのだと今更ながら強く実感した。
そんなどこか背徳的な気持ちが湧きドキドキしていると浅く息を乱しながら花咲里が「……蓮」と声をかけた。
一瞬にして現実に引き戻された俺は出来るだけ冷静さを保ちながら「どうした」と応えた。
「ごめん……汚しちゃって」
「──は」
「シーツ……その……私の、あれで」
花咲里が何を言いたいのか分かった俺は安心させるために表情を和らげた。
「気にするな。シーツの一枚や二枚、いつだって俺が洗濯する」
「……洗濯するのは洗濯機だけど」
「まぁ、そうだな」
「……ふふっ」
花咲里の返しと少し笑った顔に安堵した。
(そういうことが言えるならそんなに心配しなくても大丈夫か)
俺は男だから処女ではなくなった女性の気持ちはよく分からない。
童貞を捨てた俺にとっては夢のような時間で、瞬間で、こんなに幸せな経験はないだろうと幸福感すら覚えていた。
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