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(だけど花咲里は?)
俺との初めてはよかったのだろうか?
本当に俺に初めてを捧げてよかったと思ってくれたのだろうか?
これ以上幸せなことはないと思いつつも、それは俺の独りよがりの気持ちかもしれないと思うとほんの少しだけ不安になってしまった。
「蓮、もういいよ」
「あ──あぁ」
大人しく後処理をされるままだった花咲里が上体を起こした。
「シャワー浴びてこようかな」
花咲里が俺の顔をまともに見ないまま小さく呟く。そんな花咲里の様子に少しだけ胸に痞えるものがあった。
(なんか……素っ気ない)
行為を終えた後、どうしたらいいのかまでは分からなかった。
普通なら快感に身を任せて腕枕なんかをしながらそのまま眠ったりするものなのだろうか──なんて想像はするが……
(確かにシャワーは浴びたい気はするが)
盛大に汗をかいたまま眠りにつくのが憚れた俺は花咲里の現実的な言葉に妙に納得した。
それと同時につい数分前はあんなに盛り上がっていたのに──という焦燥感が胸に漂ったのも確かだった。
(なんかやけにあっさりしているな)
花咲里らしいといえばそうなのかもしれないが──なんて思っていると突然右手に違和感を覚えた。
(ん?)
違和感の元に視線をやると花咲里が俺の右手を握っていた。
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