spicesugar 第九章

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(そういえば昨日は無我夢中で失念していたけれど……) 本当ならそれは最優先で気にしなくてはいけないことではないのかと真剣に考えた。 でも私と蓮はもう──なんて考えていると急に後ろから強く抱きしめられた。 「っ!」 「……花咲里、おはよう」 「れ、蓮?!」 椅子に座って携帯を握りしめていた私は驚きのあまり一瞬体を硬くした。それに気が付いたのか蓮が申し訳なさそうに「驚かせてごめん」と呟いた。 「あ……ううん。いきなりだったからちょっと驚いたけど怒っていないよ」 「……」 怒っていないアピールをした私に蓮は再度ギューギューと抱きしめた。 「ちょ、蓮っ」 「……放したくない」 「え」 「花咲里と離れたくない」 「~~~っ」 (な、何っ、この可愛い生き物!!) 大きな体を丸めて、すがるように抱きついている様は傍から見たらちょっと異様な光景かもしれない──なんて考えている一方で、こんな強面男が妻に抱きついて『離れたくない』とか甘ったるいことを言っているのが可愛いとか思ってしまっている。 (昨夜はあんなに……あんなに男らしく激しかったのに!) 瞬く間に恥ずかしい記憶が蘇り盛大に焦ってしまった。 「花咲里ぃ~~~」 「あぁぁ、あのね、蓮。今、ご飯の支度しているからちょっとだけ放れよっか?」 「……」 すると私の首筋に顔を埋めていた蓮がゆるゆると頭を上げた。
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