spicesugar 第九章

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蓮と共に朝食やお弁当の支度を済ませ、いつもより少しだけ早い時間に食卓を囲んだ。そしてご飯を二口、三口咀嚼したところで切り出した。 「ねぇ、蓮」 「ん」 「蓮って昨日、コンドームしていなかったよね」 「?!」 すると蓮は盛大に(むせ)た。ゴホゴホ咳き込んでいる蓮に慌ててお茶を差し出した。 「大丈夫?」 「ん……んん………あぁ」 差し出したお茶を飲みながら蓮は少しずつ落ち着いて来た。そして顔を赤らめながら私の顔をジッと見た。 「何」 「何って……それは俺の方の台詞」 「?」 「なんで急に……コ、コ……コン……」 「コンドーム」 「っ! あぁぁぁぁ、花咲里の口からそんな単語が出るとか!!」 「何を喚いているのよ。そんなに恥ずかしい単語なの?」 「寧ろ何故そんなに冷静にそれを口にしているのか不思議でならない!」 「私は蓮が何故そんなに狼狽えているのかが分からない」 「……」 「……」 一瞬、私たちを包む空気がどんよりした気がした。 (何よ、私、変なことを言った?) 先刻携帯で調べた時に疑問に思ったことがそれだった。童貞男性がやりがちな失敗という記事の中にコンドームに関することが入っていた。 コンドームを装着するのに手間取ったりすることが失敗と書かれていたが、そういえば蓮はしなかったな、と。 だからどうしてしなかったのかその理由が訊きたかった。
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