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蓮を見つめているのが辛くなってしまい思わず顔を俯かせた。すると──
「違うんだ、花咲里!」
「!」
突然聞こえた蓮の大きな声にドキッとしてすぐに顔を上げた。
「ごめん。違うんだ」
「違うって……何が」
「昨日、俺がゴ、ゴ、ゴム、をしなかったのは……」
「しかなかったのは?」
「~~~単純にするのを忘れていただけだ!」
「…………は?」
「本当にごめん! 俺、花咲里とひとつになれるってことだけで頭の中がいっぱいになっていてその……ゴム、とか……避妊、とか……全然頭になかった」
「……」
「そうだよ……本当ならちゃんとゴムしてやらなきゃいけないんだよな。それなのに俺は目先の幸福と快楽に溺れてしまって…!」
「……」
堰を切ったように喋りまくる蓮をただただ茫然と見ていた。
(ただ……忘れていただけ?)
至極単純なその理由に一瞬訳の分からない怒りが湧いたけれど、でもその怒りも蓮の『花咲里とひとつになれる』とか『目先の幸せと快楽』という言葉でまるで波が引くように治まってしまった。
(……そうだよね、お互い初めてだったわけだし)
私だってコン──……ゴム! をしないことに対して気が付かなかったし、気にもしなかった。
それだけ蓮との初めての行為に夢中になって溺れていたのだ。
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