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「赤ちゃん欲しくないって……それって……」
分からないと思いつつもちゃんと分かっていること前提で口からは言葉が出ていた。
「それって私との赤ちゃんが欲しくないって意──」
「っ、花咲里!」
「!」
急に蓮の大きな掌が私の両方の二の腕をガシッと掴んだ。その力強さにハッとした。
「花咲里、ちゃんと訊いて」
「……」
「最後まで俺の話を訊いてくれ!」
「………蓮」
蓮の必死な形相が私の意識を戻した。
(あぁ……私、一瞬気持ちが飛んでいた?)
蓮からの言葉が思いのほかショックだったのか、一瞬意識が混濁していたような気がした。
でも今、ちゃんと思い出した。
『だけど──最後までちゃんと訊いて欲しい』
口下手だから、伝えるのが苦手だからと前置きしていた蓮の言葉を思い出した。
(そうだ、最後までちゃんと訊かなくっちゃ)
開口一番に放たれた蓮の言葉の威力がもの凄くて、しなくてもいい不安を抱くところだった。
緩く頭を振ってから蓮を見つめた。
「話の腰を折ってごめん。続けて」
そう伝えると蓮は浅く頭を縦に振った。
「赤ちゃんが欲しくないというのは、今はまだっていう意味だ」
「──え」
「花咲里との赤ちゃん……子どもだったら俺、めちゃくちゃ欲しい」
「!」
「何人いたっていい。花咲里が許してくれるなら四人、五人、六人だって──いや、それ以上でも」
「そ、それは多過ぎ!」
恥ずかしさのあまり思わず口を挟んでしまった。
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