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処女ではなくなった証を目にする度に羞恥を感じたけれど、どうしてもその時の状況が幸せ過ぎて誰もいないのをいいことに盛大に顔をニヤけさせた。
(あぁぁぁぁ、もう!)
私だけがこんな風じゃなければいいなと思った。きっと蓮だって私と同じようになっていればいいなと──……
「……」
(いやいや、蓮は仕事しているんだからニヤけていちゃダメでしょう!)
おかしくなり過ぎて相変わらずのひとり脳内ボケツッコミを繰り広げてしまった。
「……ちゃんと洗濯しよう」
少し気持ちを落ち着かせてシーツを抱えて洗面所へ向かった。
ボタンひとつで稼働を始めた洗濯機を見つめながら不意に思い浮かんだことがあった。
(そういえば……)
前々から蓮と本当の意味で夫婦になったあかつきには行かなければいけないと思っていた場所があった。
正真正銘夫婦となった今、ようやく其処へ行けるのか──と思ったら急に胸がギュッと掴まれたような気がした。
決して忘れていた訳じゃなかった。
いつだって忘れてなんかいなかった。
だからこそようやく結ばれた蓮と共に私は其処へ行かなくてはいけないのだと思い出したのだから。
(蓮が帰って来たら言ってみよう)
そんなことを思いながら洗面所を後にして掃除機を手に取った。
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