spicesugar 第九章

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もっとも今あったとしてもひとつでは到底足らないし、第一ああいうものにも使用期限があるらしい。もうとっくに切れているだろうそんなものを花咲里に使えるわけがない。 ということでいつも利用しているスーパーに寄ってから花咲里にもうすぐ帰宅するとメールしようと思った。 ──が (なんで売っていない!) いつものスーパーに目的の物は売っていなかった。焦った俺は思わず菓子売り場にいた女性に場所を訊こうとしたが──散々迷った挙句訊けなかった。 (……はぁ、情けない) 大の大人が買いたい物が買えないとは随分情けないと気落ちした。 しかしどうしても今日、今、この時それを買わなければ! ──この後のことを考えるとどうしても手に入れなければいけないのだ。 (……こうなったら) 考え抜いた末、売り場にいた女性に訊くよりも数倍はマシであろうと判断した相手にメールを送った。 (多分根掘り葉掘り訊かれることになりそうだが) それでも今の俺にはそんな恥ずかしさが待ち受けていようともどうしてもそれが欲しかったのだ。 メールを送ってからものの数十秒、すぐに返信が来た。 【ドラッグストア】 そのわずか七文字が今の俺にとっては手を合わせたいほどに神々しい文字に見えた。しかも余計なことが書かれていないところは本当に親切仕様だと思ったのだった。
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