spicesugar 第九章

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心の中で盛大に焦っている俺は恐らくしかめっ面をしていたのだろう。一旦物腰柔らかになった店員が再び顔を引きつらせているのが分かった。 (拙い…!) このままでは店員に去られてしまうかもしれないし、何といってもこんなことで帰宅を遅らせ花咲里と過ごす時間を短くしたくないという気持ちから恥を忍んで告げた。 「ゴ、ゴ、ゴ……ム」 「──は?」 「ゴ、ゴム……」 「……あ、あぁ、ゴム手袋ですか?」 「違う!」 「ひっ!」 思わず大きな声が出てしまい店員を怯えさせてしまった。 「あ、す、すみません! 違う……いや、怒っているわけではなくて、俺が欲しいのはその……ゴ、ゴム……」 「……」 「アレの……その、ひ、避妊するための」 「あぁ、スキンですね」 「は? ス、スキン?」 訊き馴染みのない言葉に一瞬呆けてしまったが店員はあっけらかんと「コンドームですよね」と告げた。 (な、なんでそうズバリと!) 花咲里にしてもこの店員にしても、何故アレをそうズバッと正式名称で言えるのか理解に苦しんだ。 そんな焦っている俺に構わず何故か店員は先ほどまでの怯えた態度から一転、やたらとニコニコして言葉を続けていた。 「今の若い子はスキンなんて言わないのかしらねぇ。でも結構いるんですよ、そのままズバリ言えない子が」 「……はぁ」 (若い子──この女性からは俺はそう見えるのか?)
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