spicesugar 第九章

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随分と気の早い話をいくつかしているうちに目的地の駅に着いた。新幹線を降りてから駅近くにある停留場からバスに乗り込む。 目指す場所は山の中腹にあるのでしばらく続く山道に気分が悪くなりそうだった。もっとも私は何度かこの山道を経験しているので慣れてしまっているけれど。 (蓮はどうかな) ふと隣に座っている蓮を見るといつも通りの顔つきだった。 「ん? 何だ」 「えっと、気分悪くなっていないかなと思って」 「あぁ、山道な。俺は平気」 「そうなんだ」 (意外というか見かけ通りというか) 「花咲里は? 大丈夫か」 「私は慣れているから平気」 「……いつもひとりで来ていたのか」 「え?」 「お墓参り」 「あぁ、うん。といっても頻繁に来れないからお母さんとお父さんの命日にだけ来るんだけどね」 「まぁ、遠いからな」 「そう。交通費も馬鹿にならないから毎月コツコツ貯めて来ていたって感じ」 「……」 私にとってはなんでもない会話だったのだけれど、何故か蓮が一瞬哀しそうな表情を浮かべた。 (あ、もしかして) 同情されちゃったかな? 何か慰めの言葉でも言われるのかな? ──なんて身構えていると 「……やっぱり車、買おう」 「へ?」 蓮はそう言ったっきりもう黙ってしまった。 (あぁ……こういうところ) 蓮のこういうところが好きだなとしんみりと思った。
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