5786人が本棚に入れています
本棚に追加
──隣から微かに鼻を啜る音がした
(あぁ……今、目を開けてはいけない)
そう思った俺は続けて花咲里の両親へ思いの丈を心の中で話し続けた。
(えっと……どこまで話しただろうか)
こういう形とはいえ花咲里から両親を紹介されてとても嬉しかった。
祖父から花咲里の両親については粗方訊いてはいたが、花咲里自身の口から訊くのとはまるで違った。
花咲里は両親に愛されて育った娘。そして花咲里も両親のことを深く愛している。
決して幸福ばかりの子ども時代ではなかったのは重々承知している。
花咲里の父親も花咲里自身もお金に関することで沢山苦労して来た。そんな中でも花咲里は決して親を憎まず家族の負の遺産をあたりまえのように背負って来た。
そういうところも花咲里の魅力であり尊敬するところだ。もっとも対人面に関しては少しひねくれた方向に育ってしまったようだが。
でもそんな面も今では徐々に改善されて来ていると思う。
俺が軌道修正させる──そう強く思っていることを花咲里は知っているのかいないのか。それは分からないが、とりあえず伊志嶺の両親や兄姉妹弟との関わり方を見ていると決して花咲里を悪い方に導いてはいないと自負することが出来た。
(だから心配しないでください)
あなたたちの分まで花咲里は俺が幸せにしますと再度強く心の中で誓った。
最初のコメントを投稿しよう!