spicesugar 最終章

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「あぁぁぁー花咲里様、どうかお座りになっていてください」 「そうだよ、花咲里ちゃん。ジッとしていないとダメなんだからね!」 「高い処の雑巾がけなんて俺に任せればいいから。ほら座って座って」 (はははっ……今日も賑やかだなぁ) あの時には想像だにしなかった賑やかな日常が私のいつも通りになっていた。 「みんなちょっと花咲里に構い過ぎ。妊娠は病気じゃないんだから多少動いた方がいいのよ」 「ふふっ、相変わらずクールだね、蘭は」 「可愛げがないって言いたいんでしょう?」 「ううん、めちゃくちゃ可愛い」 「っ、そんなことをいうのは花咲里だけよ」 「そうなの?」 現在、我が家には伊志嶺家の人たちが押し寄せている。 というのもつい先日、私の妊娠が発覚したと同時に蓮が三日ほど出張で家を留守にすることになり、そんな中で私をひとりにすることに不安を覚えた蓮が澄子さんに自分がいない間、家にいてくれないかと頼んだのだ。 その結果、澄子さんだけじゃなく何故か伊志嶺家の誰かがもれなくついて来ていた。 今日は蓮のお兄さんの由治さんとその奥さんである梢さん、そして蓮の双子の妹の蘭が家に来ていた。 (というか私、妊娠発覚したばかりで悪阻すら来ていないんですが) つくづく蓮の私に対する過保護ぶりが未だに健在で嬉しいやら戸惑うやらで複雑な気持ちでいっぱいだった。
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