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しばらくは私とふたりきりの生活を愉しみたいと言っていた蓮だったけれど、勤めている会社の社長さんで大学時代の先輩でもある加々宮さんのところに赤ちゃんが生まれてからというもの、毎日のように訊かされる加々宮さんの子ども自慢話に感化され「俺たちもそろそろ」なんてあっさりふたりきり生活を解除をしてしまう有様だった。
そんなわけで買い溜めしてあった大量のコン──ゴムを使い切る前に妊活が始まり、そして一年と数か月後、ようやく私の妊娠が判明したのだ。
それを訊いた蓮の喜びようは──……まぁ、想像出来ると思うので割愛するけれど、兎に角そんな感じで待ちに待った待望の妊娠だったので初期妊娠に関しての心配が蓮にはあったようだ。
妊娠出産の先輩である澄子さんを筆頭に、主に女性軍が蓮のいない間私を気遣うために遣わされていた。
しかしそんな中に雑じって伊志嶺グループのトップに君臨している由治さんがいるのもおかしいなと思いながら「お義兄さんは今日、お仕事は休みなんですか?」と訊くと「はははっ、社長といえどちゃんと有給休暇は消化しないとね」なんてよく分からない返答をされた。
実はこの由治さんという人のことを私はよく分かっていない。とりあえず家族思いのいい人だということだけは知っているのだけれど。
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