spicesugar 最終章

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結婚してから婚家である伊志嶺家の人たちは付き合えばあうほどにいい人たちばかりだということを実感させられる。 金持ちはプライドが高くてブランド好きの冷たい人ばかりという私の勝手な想像はここでは全く当てはまらなかった。 そんなことを考えながら皆さんに至れり尽くされしていると携帯から聞こえて来た着信音。誰から来たのかすぐに分かる。 「また蓮から? これで何回目よ」 少し険のある口調で呆れたのは蘭だった。 そう、蓮は出張に行ってから一日に何度も電話やメールを送って来ていた。なので既に家に来ている皆さんは決まった着信音が蓮だということを知っていた。 「今日は……三回目、かな?」 「ちょっと貸して」 「あ」 持っていた携帯を蘭が取り上げた。そしてそのまま通話を始めた。電話口から聞こえてくるのは蓮の焦りとも怒りとも取れる声。 (丸聞こえだよ、蓮) 双子ならではのやり取りに微笑ましさを感じながら、やっぱり兄妹弟(きょうだい)が多いのはいいなと思った。 出来ればこの子にも妹弟がいたらいいな──なんて、まだ芽生え始めたばかりのお腹の子に対して思ってしまい、思わず心の中で(蓮に劣らず親馬鹿過ぎるな、私も)なんて笑えてしまったのだった。
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