秋時雨 ー麻琴sideー

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「なんか、元気ないよね?」 春香はそう言って私の顔を覗き込んだ。休憩室は私と春香しかいない。コンビニ弁当を食べながら、眉を寄せる。 「元気だよ〜、ちょっと夏バテ気味なだけ?」 「なんで疑問形なの。麻琴は細いんだからちゃんとたくさん食べなよ!あの花屋のイケメンと付き合うんでしょ。ガッツが必要だよ!」 ガッツかぁ〜。すっごいあったんだけど、あんなに奥さんの事、愛してたんだなぁって身に染みて感じたから少ししぼんでしまった。死んだ人には敵わない。だって、スタートラインが違う。 「また、会いに行くんでしょ?もう、しゃんとしなよ」 春香に背中を叩かれた。バシッといい音がした。 「痛い…」 「気合い入れてあげたのよ。私も明日、研修医と合コンだからね!目指せ玉の輿」 春香の声が休憩室に響いて、私は思わず笑ってしまった。
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