時ならぬ雨 ー郁人sideー

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 まこっちゃんはよく、ボーナストラックって言っていたけど、おれもじつはそうなんだっていったらどんなかおするかな。 ほんとうは7ねんまえ、はんにんがきたとき、おれもママといっしょにほしになるはずだった、っていったらびっくりする? おとーさんにはとんでもないけどこんなことはいえないな。だって、ぜったいないちゃうもん。おれがママのはなしをしようとするとめになみだをいっぱいにしちゃうんだ。かおをしわしわにしてないちゃう。おれはそれをみたくないんだ。  おとーさんにはひみつだったんだけど、おれにはママのこえがきこえる。 これをいうと、ゆうれいがみえるみたいにおもわれたらいやだから、だれにもいったことないんだけど、ほんとうにずっときこえてた。ときどきうっかりへんじしちゃいそうになるんだ。 「郁人っ!ちゃんと歯磨きしなさいっ、お父さんの言うこと聞きなさい」って。 だから、おれはママのことはママって呼ぶけど、おとーさんのことはママがずっとおとーさんて呼ぶから、パパってよんだことがない。 おとーさんはてきとうだからそんなこと、きにもしたことなかったみたいだけど、まこっちゃんはきづいてた。 おれはそれをきかれたときしんぞうがすごくドキドキしたんだ。 なんてこたえようって。 まさか、ママがそうよんでるから、なんていえないよね。 おれのボーナストラックってやつはあと2ねんしかないらしい。 ママがときどきさびしそうなこえでいうんだ。 「郁人、もう少しお父さんと一緒に居させてあげられなくてごめんね」 「ママにはどうしてそんなことがわかるの?」 「ママは郁人より先にお星さまになっちゃったから、分かるの。でもこっちに来たらママと一緒に居られるから寂しくないよ」 「さびしくない?ママといっしょなの?」 「そう、ずっと一緒よ」 「じゃあ、おとーさんと、まこっちゃんはどうなるの?もうふたりにはあえないの?」 ママはこのしつもんをするとへんじをしなくなる。 「ママ?ママ?いるの?」 「いるよ。少しの間、お別れするだけよ。また会えるようになるから。みんなお星さまになるからね」 「みんな、おほしさまになるのか。じゃあ、みんないっしょにいられるね」 おれはホッとした。よかった、いつかみんないっしょにすごすことができるんだね。 「ママ、おほしさまになるひはえらべるの?」 「どうして?何か理由があるの?」 おれはおとーさんがあめのひがキライでこわがっていることをしっている。 あめのひのおむかえはいつもクルマなんだ。 そして、ぜったいあめにぬれたがらない。 あめのひはあたまがいたいってよくおくすりをのんでいる。 なきむしなおとーさん。 「おれ、はれたひにおほしさまになりたいな」 そうすれば少しでもおとーさんのあめギライがよくなるかな。 でも、やっぱりおれがいなくなっちゃったら、ないちゃうかな。 かおをしわしわにして、ないちゃうだろうな。 おとーさんがないちゃうのはいやだな。 おれの、なきむしおとーさん。 あめなんて、そらからふってくるだけの、なんでもない、みずなのにな。
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