五月雨 ー麻琴sideー

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 雨が私の頬を伝い、まるで家に帰るように自然と地面に落ちる。一瞬、一滴、一粒を集め、雨は輝きを増し、足元まで流れていく。昔は雨を憎らしく思っていた。無機質で、空の太陽を覆い隠した灰色の分厚い雲を見ると、私の心まで薄暗くなっていくようだった。   今はその雨が姿を変えてしまったことが、ただ嬉しく、心から楽しい。雨の一瞬、一滴、一粒、全てを抱きしめ、この視界に焼き付けたくなるほど。
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