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夕立は時間にして5分も降っていなかったように思う。
あの日、私は眠りについた史悠さんにメモを残して、甘く痛む下腹部と腰をさすりながら家路についた。洗濯機はとシャツは勝手に借りた。それぐらいは許してもらおう。郁人くんが家にいなかったがカレンダーにはお泊まり会と書かれていた。その日に予定があった事に安堵した。
メモには「洗濯機借りました、ありがとうございました、麻琴」とだけ書いた。まさか、あさひさんの代わりに抱かれましたなんて書けるわけもない。そう思って、涙がこぼれた。これで良かったのか、悪かったのか、私には分からない。人から見たらバカな話だろうな。恋は盲目。惚れた方が負け。まさかボーナストラックの人生でこんなに苦くて堪らない恋が待っているとは思いもよらなかった。せめて、次、山瀬生花店に行けるように悪あがきのように史悠さんのTシャツを1枚着てきた。彼の匂いと柔軟剤の混じった匂いが私を包んだ。
この匂いに抱かれたのだと、想いは通じてはいないが一瞬でも、彼の一部になったのだと思い込むことで今は自分を保つしかなかった。
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