夕立 ー史悠sideー

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 ことちゃんは夜勤前や仕事終わりに店に覗きに来てくれた。僕はタオルで汗を拭われた一件で彼女との距離には気をつけていた。あの時は無意識に手が伸びそうになった。近づきすぎると危険だ。彼女は確かに僕を嫌ってはいないようだが、僕としてはその向けられる感情に対して答えを持っていなかった。  可愛いし、顔を見れるのは嬉しい。でもそれ以上になるのは怖い。そんな資格は自分にないとも思う。で、最初に戻る。そこをぐるぐると回っている。 本当に煮え切らない男だ。しかし、彼女も無理にその距離を詰めてくるようなことはしなかった。22歳だけれど、とても彼女は落ち着いている。見た目は若く、活動的な面もあるが、看護師という職業柄か、静かに観察されているのではないか、と時々思うことがある。
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