獄中での婚姻届

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獄中での婚姻届

優菜の妊娠がわかった祐輔の父は、 翌日に祐輔の面会に行きます。 祐輔のいる少年院は、新潟にありました。 新潟は、秋でも寒い場所です。 そんななかで生活している祐輔は、 つらい日々を送っているのだろうと 優菜は思いました。 「ここで待っていなさい」 祐輔の父に言われて優菜は、 外で待っていました。 そして、面会の場所で 祐輔が出てきました。 当然ながら、衝立があります。 「祐輔、今日は大切な話があるんだ」 「父さん、大切な話って何?」 「昨日、優菜さんのお父さんが 訪ねてこられて優菜さんのことを 話したんだ。優菜さんは、 今妊娠4カ月だそうだ」 「優菜が妊娠⁉ 」 「心当たりがあっても不思議はない。 優菜さんと関係を持ったのも、 交際してからだと推測できる。 妊娠4カ月だということだと、 優菜さんがアメリカに行く時に 関係を持ったのだと思う。 医者からは、中絶は できないと診断された」 「父さん、オレは優菜に 子供を産んでほしい。 優菜には、大学を卒業したら 結婚しようと言った。 オレには、優菜が必要だ。 あの時、優菜がアメリカに行く時に オレは、今までの最後の思いを 封印していたものを解いて愛し合った。 うれしかった、封印を解いて 愛し合ったことを後悔はしていない」 「おまえが、優菜さんを 愛しているなら一緒になるといい。 おまえが、優菜さんに宿った命を 大切に守るのなら結婚をしたらいい」 「父さん、優菜に会いたい。 会って、子供のことを話したい」 「おまえが、そう言うと思って 連れて来ているよ。 優菜さん、入りなさい」 そして、外で待っていた優菜が 面会室に入っていた。 「父さんは、外にいる。 二人で話をしたらいい」 そう言うと、祐輔の父は 面会室の外に出た。 「優菜」 「祐輔、あなたに会いたかった」 「体は、大丈夫なのか?」 「えぇっ」 「優菜、おまえのおなかの子は あの時の…」 「そうよ、私がアメリカに行く前に 結ばれた時の子よ。 祐輔、今はケガをさせた運転手さんに 何ができるか考えて。 そして、もし悩みがあって苦しい時は 私が、あなたの防波堤になる。 だから、お願い。 私をあなたのそばにいさせて!」 「優菜、これから つらい思いをさせてしまう。 こんなオレでも、おまえは ついていくって言うのか?」 「あなたには、守るものがあるのよ。 私は、あなたの帰りをこの子と 一緒に待っている」 「優菜、優菜、 愛している、愛しているよ」 「祐輔、私もあなたを愛しています」 「優菜、産まれてくるオレの子を 心配しないで産んでくれ」 「祐輔」 「どうやら、話は決まったようだな」 「父さん」 祐輔の父が、話が終わるのを 待っていたかのように面会室に入ってきた。 「祐輔、さっきこちらの 責任者の人に話をした。 そしたら、おまえの行動次第で 結婚をしてよいということだった。 それでだ、これにおまえの名前を 書くだけにしている。 おまえは、まだ19歳だから 親の承諾がなければ結婚はできん。 また、この書類の立会人に 優菜さんのお父さんと おまえの叔父さんになっていただいた。 あとは、おまえの署名が 書けたら役場に出せる。 祐輔、これから優菜さんと 産まれてくる子供を守っていくならば、 この婚姻届を書いていけ」 祐輔は、父から看守に 渡された書類を見た。 婚姻届には、夫の名前は 空欄になっていたが認印が押されていた。 妻の名前には、優菜のフルネームが 書いてあり認印が押されている。 優菜が、正式に 自分の妻になろうとしている。 祐輔は、婚姻届に 自分の名前を書いて看守に渡した。 看守は、婚姻届を父に渡した。 「祐輔、確かに受け取ったぞ。 あと被害者への賠償金などは、 父さんの会社の弁護士にお願いしている。 示談が成立すれば、 ここから出ることができる。 それまで、もう少しの辛抱だ」 祐輔と結婚、夢のような出来事に 優菜は感謝していた。 そして、祐輔と一緒に暮らしていける。 そんな夢がかなうことが できるように祈る優菜だった。
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