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両親との対面
ある日、優菜が祐輔に言った。
「私の両親に会ってほしいの。
私と祐輔とのことをきちんと
認めてもらおうと思うの」
「優菜、キミのお父さんたちに
オレたちのことわかってくれるかな?」
「心配なのはわかっている。
だけど、このまま黙ってつきあうよりは、
公にわかってもらうのがいいと思うの」
祐輔は、不安だった。
優菜との交際を反対をされないかと…。
実際は、自分の父は建設会社を
経営しているが、自分がアイドルとして
仕事をしているだけに優菜の将来に
負担にはならないかと思ったからだ。
「祐輔、犬は苦手ってことない?」
「えっ?オレは犬好きだけど、なんで?」
「うん、私の家に犬を飼っているから
聞いてみたの。外で飼う犬じゃなくて、
家の中で飼っているんだ」
「家の中で飼っているって
どんな犬種だ?」
「ポメラニアンだけど」
「ポメ、飼っているんだ。
ポメって、わりと賢いよな。
実は、今週の日曜に
オフが入ったから一緒に行くよ」
「ありがとう、祐輔」
そして、日曜日になった。
この日は、優菜は祐輔を会わせてから
デートに行くことになった。
「いらっしゃい、祐輔くん。
いつも、優菜と仲良くして
くれてありがとう」
「よく来てくれたね、祐輔くん。
キミのお父さんとは、
懇意にしてもらっているんだ。
仕事の面でも、個人として
ゴルフにも一緒に行く仲なんだよ。
だから、優菜がキミを連れてくるのを
楽しみにしていたんだ」
優菜の父親は、建設会社の社長で
自分の父親の取引先だったのだ。
そして優菜は、社長の娘だったのだ。
だけど、優菜は
そういう付き合いを嫌っていた。
お嬢様だからと言って取り巻きみたいに
付きまとわれるのがイヤだったからだ。
「ワンワン」
「あらっ?トワコ、
お庭から帰ってきたの?」
優菜は、トワコと呼ばれている犬を
抱っこして祐輔に見せた。
「この子が、おまえの
言っていたポメか?」
「そうよ、名前はトワコ。
ポメラニアンでは、めずらしい
クリーム色の毛色をしているの」
「こいつ、かわいい顔しているな。
人間だったら、男がほっとかないぞ」
「もうっ、祐輔ったら」
「おいおい、犬にヤキモチやいて
どうするんだよ?」
「だって、イヤだもん。
他の女の子のこと話されるの」
「バッカだな、おまえ。
トワコは、犬だぞ。
犬に嫉妬してどうするんだ?」
「うん、やっぱり祐輔には
私だけを見てほしい。
他の女の子にとられるのイヤだ」
優菜が言った言葉は、
祐輔への本心だろう。
彼氏になってと言って
付き合うようになってから
恋人として何度も深い仲になっていた。
それだからこそ言える
自分の気持ちなのだろう。
「さぁっ、トワコ。
あなたは、ママのところに来なさい。
お姉ちゃんは、これから出かけるからね。
祐輔くん、これからもちょくちょく
遊びに来てちょうだいね」
「お邪魔しました、お昼まで
ごちそうになって恐縮です」
「何言ってんの、男の子なんだから
遠慮しないでいいのよ。
優菜とのことよろしくね」
「ありがとうございます、また来ます」
祐輔は、思った。
こんなに温かくて優しい家族に
恵まれている優菜は幸せなんだと思った。
今度は、優菜を自分の両親に会わせよう。
アイドルとして仕事をする時に
理解を示してくれた両親に
優菜を会わせたい。
そうした気持ちになった祐輔であった。
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