胸騒ぎの予感

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胸騒ぎの予感

優菜が、卒業旅行でアメリカに 出発をしてから祐輔は優菜のいない 寂しさをいつもの遊び仲間と一緒に いることで寂しさを紛らしていた。 優菜が帰国する予定になっていた 秋の夜のことだった。 祐輔は、その日いつものように 遊び仲間と夜遅くまで遊んでいた。 そして、祐輔は事件を起こしてしまう。 祐輔は、タクシーで宿泊している ホテルに帰ろうとした。 しかし、最初のタクシーが 乗車拒否をしてしまったのだ。 やがて、次のタクシーが到着して ドアを開けた時だった。 祐輔は、タクシーの運転手さんに 大けがをさせてしまったのだ。 このことは、アメリカにいる優菜に 国際電話で伝えられた。 帰国を早めて日本に戻ってきた優菜は、 祐輔が傷害罪で少年院に送られたことを 知らされたのだった。 「優菜、体の具合が悪いの? 食事がとれてないようだけど…」 「うん、食べようとしているんだけど 気持ち悪くなって」 そう言った途端に、優菜は 洗面所に駆け込んでいた。 「優菜?あなた、 妊娠しているんじゃないの? 明日にでも、お医者様に行きましょう」 「ダメ、体調がわかったら 祐輔に嫌われてしまう」 「優菜、気持ちはわかるけど 祐輔くんにも知らせないと いけないことなのよ。 お母さんとお医者様に行きましょう」 そして翌日、優菜は母親と一緒に 産婦人科のある総合病院に行った。 「間違いありません、 現在妊娠4カ月です。 もう、中絶は無理でしょう。 これからのことは、 よく話し合ってください」 「お母さん、祐輔に黙っていて。 妊娠しているってわかったら 嫌われてしまう」 「優菜、これからのことは お父さんたちで話し合うことに しましょう。 安心しなさい、今はおなかにいる 赤ちゃんを大切にしなさい。 母親であるあなたが、情緒が不安定だと おなかの赤ちゃんによくありませんよ」 「お母さん」 優菜は、不安だった。 祐輔の子供が宿っている今、 祐輔自身が産むことを 許してくれるだろうか? そして、優菜の母の知らせで 優菜の父が祐輔の父を訪ねていた。 「なんですって?優菜さんが 祐輔の子供を身ごもったって?」 「今日の午前中に、 家内が付き添ってわかりました。 優菜は、現在妊娠4カ月です。 中絶は、無理だと診断されました」 「そうですか、祐輔は アメリカに行く優菜さんに 何かを残して 旅立たせたんでしょう。 そこまでして祐輔は、 優菜さんに恋をしていたんですね」 「今度、祐輔くんの面会はいつですか? できることなら、優菜を一緒に 連れて行ってくれませんか?」 「祐輔の面会は、明日に行く予定に しています。優菜さんの都合がいい ならば、祐輔に会わせましょう。 祐輔のことは、親として とんでもないことをしたと思います」 「どうぞ、頭を上げてください。 祐輔くんは、私にとって大切な娘婿です。 無事に務めを果たして戻ることを 願っているんです。 以前にお話をされた優菜の大学卒業後の 結婚を承諾させてください」 「祐輔を、そこまで思っていただける とは思っていませんでした。 ありがとうございます、 祐輔に代わって礼を言います」 優菜は、祐輔の赤ちゃんがいる。 優菜は、子供のために 何ができるかを模索していた。
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