第4話 へたくそ

1/1
前へ
/102ページ
次へ

第4話 へたくそ

「よし。じゃあ1年生は希望の守備位置に付いて」 監督の号令と共に1年生部員たちが守備位置に散った。 僕は中学時代、監督の指示でライトを守っていたが 肩も強くないし、足も速くない。 それに、本当は内野手をやってみたかった。 僕はセカンドの守備位置に付いた。 監督のノックが始まった。 1年生の実力を見極め、即戦力になりそうな選手を探すのが目的だ。 高坂くんはやっぱり上手だ。 難なく打球を捌いている。 上山くんも偉そうにしているだけあって 華麗に打球を捌いている。 僕はというと・・・ 1巡目、真正面の打球 バウンドにタイミングを合わせることができず後逸。 上山くんが訝しげに僕を見ている。 2巡目、右方向の打球 何とか追いつくも、グローブに当てて、弾いてしまう。 上山くんが呆れた様子で僕を見ている。 キャッチャー松島くんの前に監督がゴロを転がした。 松島くんは捕球して、セカンドへ送球。 僕はセカンドへ入り、グローブを出した。 唸るような剛速球が、一直線に僕に向かってくる。 ボールは僕のグローブの横を素通りし、センターへ。 上山くんが苛立ちを抑えきれない様子で僕に言った。 「なにやってんだ!へたくそ!」
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加