第5話 火種

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第5話 火種

「そんな言い方しなくても良いだろ!」 高坂が上山に詰め寄った。 「はぁ?へたくそにへたくそって言って何が悪いんだよ。  そういやぁ、お前、アイツと同じ中学だったっけ?  よくあんなのと一緒に野球やってられたな」 「なんだと!」 高坂が上山の胸倉を掴んだ。 児玉は二人に駆け寄り 「2人とも!止めてくれよ!  僕が悪いんだ。ゴメン・・・」 「児玉・・・」 高坂は上山から手を放し、心配そうに児玉を見つめている。 上山は高坂を睨みつけながら、ユニフォームを直し 「お前みたいなのがいると練習の邪魔なんだよ。  先輩方にも迷惑だし、辞めた方が良いんじゃねぇの?」 「待てよ」 オレは思わず口を挟んでしまった。 確かに上山の言う通り、ここまでへたくそな奴がいると 練習のリズムは狂うし、チームの練習の邪魔になる。 内心ではそう思っていたのに 「何も辞めることはないだろ。お前、野球やりたいんだろ?」 「・・・」 アイツはうつむいたまま黙っていた。 煮え切らないアイツに苛立ったオレは 「やりたいならやりたいってはっきり言えよ。  そんな程度なら、どうせ3年続かねぇし、辞めるなら辞めろ」 「ちょっと待てよ!こいつは本当に野球が好きなんだ!」 高坂が言った。 オレはわかっていた。 アイツがどれ程、野球が好きなのか。 アイツと初めて出会ったグラウンドで見た、 アイツの目の輝きは今でも忘れられない。
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