8人が本棚に入れています
本棚に追加
■■■
美術館が取り壊される。
あの二通の手紙も、暗い隙間から解放される。
それを、少し羨ましいと思った。
私はこれから先も繰り返し、あの日の狭間に置き去りのままの気持ちを思い出すのだろう。
朝妻くんを見送った、美術館の中のあの部屋で、冷たい涙を流した。
その後美術館を出て、平気な顔で四人揃いながら、皆濡れた目元を隠していた。
弱まっていく冬の陽を追うように、誰もいない寂しい駅へ向かって、最後に四人で歩いた。
本当の言葉は何も言えないまま、胸の痛みを抱えたまま、誰もが誰かの幸せを祈っていた。
今までが、ずっとそうだったように。きっと、これからもずっと。
繰り返し、繰り返し、いつまでも。
終
最初のコメントを投稿しよう!