イーナは泣くことができなかった

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「ずっと、あなたのお姉ちゃんでいるからね」 「お姉ちゃん」 「なあに?」 「私の名前は?」  涙声で聞くと、フィーラは少し考えてから私の頭を優しくなでた。 「イーナのままでいいかしら?」  私はこくんとうなずき、生まれて初めて感じる安堵の中で、急速に眠りへと落ちていった。  今度起きたらお姉ちゃんの妹のイーナだ。  お姉ちゃんとたくさん遊ぶんだ。  一緒にご飯を食べて、お菓子をつくって、買い物に行くんだ。  バイバイ、ゲームの世界のイーナ。  あなたがいたから、私は壊れないでいられたよ。
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