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「私はこれからどうしたらいいの? ゲームの世界がなくなるのに、こっちの世界で生きてくなんてできないよ。仕事なんてしていけない。私、人間が好きじゃないんだもん。ゲームのキャラクターの方が好きだもん。ゲームの中のフィーラとずっと一緒にいたかったもん」
わめき立てる私に、フィーラは何も声をかけなかった。
ただ身じろぎだけで、そこにいることだけは分かった。
アンドロイドなのだから、動かないことはできただろう。
しかし、私はここにいますという柔らかな身じろぎを私に伝えようとしているのが分かった。
思えば、フィーラはここに来てからずっとそうだった。
気配をさせずに歩くことも、音もなく階段をのぼることも、玄関を開けることもできただろう。
しかし、命令されているわけではないのに、私が一人ではないということを知らせようとして、あえて自分の存在を伝え続けてくれたことに気づいて、涙があふれてきた。
「私はロボット以下だね。フィーラはこんな私を大事にしてくれるのに、私はゲームの中のフィーラと一緒にいたいだなんて言って」
少し気持ちが落ち着いてから、涙声のまま私は言った。
扉越しではあったが、人に泣いているところを見せたのは初めてだった。
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