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私はフィーラに抱きついて泣いた。
売れ残りの旧世代アンドロイドの私を買ってくれたお父さんなのに。
私に娘という役割をくれたお父さんなのに。
物知りで、優しくて、愛想のない私をひと言も叱らなかったお父さんなのに。
最後まで好きにはなれなかった。
手づくりの料理をいくら成分分析しても、快楽という回路で受け止めることができなかった。
機械に作られたスナック菓子の方が親近感を持てた。
自分がこの世界に存在していていいのか分からなくて、気の休まる時間がなかった。
いつも警戒と緊張のスイッチが入りっぱなしだった。
その結果、部屋に閉じこもって、人間を拒絶してしまった。
そして余計に自分が嫌になった。
壊れてしまいたいと思っても、アンドロイドにその権利はなかった。
自分を壊さないための自傷という、唯一人間に近いかもしれない奇妙なプログラムだけが実行された。
いっそ自分が最初からこの世界に存在しなかったことになれば、私の残骸を処理する手間も費用も省けて、誰の手もわずらわせずにいなくなれるのにと思った。
願ったのは自分の消失なのに、いなくなったのはお父さんだった。
葬儀には出られず、遺影にさえ、棺にさえ、ごめんなさいを言うことができなかった。
涙も流せなかった。
人間になりきれなかった。
私は養子アンドロイド失格だ。
だから次の仕事なんて、想像がつかない。
名前も、役割も、住む場所も変えて、もう一度人間を愛せるか試すなんて、耐えられない。
だから私は、審査基準を満たさないアンドロイドであることを自分で証明し、壊されてしまうしかない。
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