イーナは泣くことができなかった

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「せっかくフィーラと出会えたのに」  もっともっと、フィーラと一緒にいたかった。  お姉ちゃんができた気持ちになった。  十年も売れ残って廃棄寸前だった私に、お父さんを愛せなかった私に、初めてできた本当の家族だった。 「お姉ちゃんって呼びたかった」  強く抱きしめると、フィーラもこらえることができず、熱い涙を私の頬の上に落とした。  そして世界が変わった。  涙を流せるのは、人間になりきる必要のある養子アンドロイドだけだ。  メイド型や医療用アンドロイドに、涙は流せない。  はっとしてフィーラを見上げると、涙をぬぐおうともしない優しい笑顔があった。
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