イーナは泣くことができなかった

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「だましていてごめんね。私は人間なの」  ぎゅっと抱きしめられる。  私の頭をなでる彼女の右腕から、青い光のリングが外れていた。 「あなたが人間を怖がっていると思って、アンドロイドのふりをしたの。きっと、この部屋から出てきてくれることはないと思ったから」  フィーラの声は申し訳なさにあふれていた。  その気持ちを感じ取れた自分自身に気づき、さらに暖かいものが胸の中からこみ上げてきた。 「でも、顔を合わせるようになって、少しずつ仲良くなっていくうちに、いつかちゃんと説明をして、本当の家族になりたいと思うようになったんだ。なかなか言い出せなくてごめんね」 「フィーラが、私の家族になってくれるの?」  顔を上げて聞くと、フィーラは涙をぬぐってうなずいた。 「お姉ちゃんって、呼んでいい?」 「うん。いいんだよ」 「お姉ちゃん」  フィーラの胸に顔をうずめた。  人の温もりと、自分にも人を好きになることができたという感動が熱く胸を満たして、悲しみがひるがえっていく。  嬉しさがあふれてくる。
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